底地の売買で知っておきたい基礎知識~底地のメリットやデメリットも紹介
2021/08/17
底地(そこち)とは、借地権設定済みの土地を指します。相続などをきっかけとして底地の所有者となった場合、底地の売買を検討するケースもあるかもしれません。ここでは、底地のメリットやデメリットを含めた、底地売買の基礎知識について詳しく解説します。
底地と借地の違いと関係性
底地と借地の違いと関係性は次のとおりです。
土地を貸している⇒地主(底地の所有者)
土地を借りている⇒借地人(借地権を持つ方)
同じ土地を「貸している側」が「底地」、「借りている側」が「借地」ということです。
地主(底地の所有者) | 借地人(借地権を持つ方) | |
---|---|---|
関係性 | 土地を借地人に貸す | 土地を地主から借りる 戸建住宅などを建てる |
地代 | 借地人より受け取る | 地主に支払う |
借地権の売買時 | 借地人より承諾料を受け取る | 地主に承諾料を支払う |
底地の売買 | 購入者(買主)が見つかれば可能 | 売却によって地主が変わったあとでも、 借地の契約期間内であればそのまま住み続けることも可能 |
固定資産税/都市計画税 | 土地に対する固定資産税/都市計画税 | 建物に対する固定資産税/都市計画税 |
底地を所有することで得られる3つのメリット
底地を所有することで、次の3つのメリットを得ることができます。
・不動産収益(地代や更新手数料など)
・管理を借地人任せにできる
・固定資産税/都市計画税の軽減措置(建物付きの土地のほうが安価になる)
不動産収益(地代や更新手数料など)
底地の所有者(地主)は、借地人に土地を貸すことで、地代や更新手数料を受け取ることが可能です。
管理を借地人任せにできる
底地の管理は、基本的に借地人が担う点もメリットのひとつと言えるでしょう。
アパートやマンションなどの賃貸物件と比べた際、初期投資や管理費用、リフォームや原状回復の費用などを、地主は負担せずに済むということです。
固定資産税/都市計画税の軽減措置(建物付きの土地のほうが安価になる)
底地を所有するメリットには、固定資産税/都市計画税の軽減措置も含まれます。
たとえば、固定資産税評価額が5,000万円の土地の場合、6,000万円×1.4%(標準税率)=840,000円が土地の固定資産税です。
※自治体によっては標準税率を採用していないケースもあります
税金の名称 | 軽減措置 | |
---|---|---|
小規模住宅用地 ※200㎡以下 |
固定資産税 | 固定資産税評価額×1/6 |
小規模住宅用地 ※200㎡以下 |
都市計画税 | 固定資産税評価額×1/3 |
一般住宅用地 ※200㎡超 |
固定資産税 | 固定資産税評価額×1/3 |
一般住宅用地 ※200㎡超 |
都市計画税 | 固定資産税評価額×2/3 |
先程の固定資産税評価額6,000万円の土地に、小規模住宅用地が適用された際には、6,000万円×1.4%(標準税率)×1/6=140,000万円まで固定資産税が減額されます。単純計算で84万円-14万円=「70万円」の差額ということです。
底地に想定される2つのデメリット
底地を所有するメリットがある一方で、以下の2つのデメリットも想定されます。
・借地権の契約期間
・相続税
借地権の契約期間
底地を借地人に貸す場合、借地権の契約期間が設けられます。借地権の契約期間中は、たとえ地主であっても、土地を自由に使用することが認められていません。ただし、売却に関しては購入者(買主)が見つかれば可能です。
旧借地法(1992年7月31日までの契約)
建造物の種類 | 初回設定期間 | 更新後の期間 |
---|---|---|
木造 | 30年(最低でも20年) | 20年 |
鉄骨造・鉄筋コンクリート造 | 60年(最低でも30年) | 30年 |
借地借家法(1992年8月1日以降の契約)
借地権の種類 | 初回設定期間 | 更新後の期間 |
---|---|---|
普通借地権 | 30年 | 1回めの更新:20年 2回め以降の更新:10年 |
定期借地権(一般定期借地権) ※住宅用の戸建住宅やマンション |
50年以上 | 更新はありません 契約期間満了後は更地にして返還 |
事業用定期借地権 | 10年以上50年未満 ※2008年1月1日以前の場合は10年以上20年以下 |
更新はありません 契約期間満了後は更地にして返還 |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 更新はありません 契約期間満了後は建物を土地の所有者が買取 |
一時使用目的の借地権 | 2年などの設定も可能 | 一時的な使用が目的となることから、更新はありません |
相続などで底地の所有者となった際には、旧借地法(1992年7月31日までの契約)が適用されるケースが多いかと思われます。
相続税
底地は相続財産に当てはまるため、相続にて所有した場合には、相続税を納める可能性があります。底地などの土地の相続の分割方法は次の4種類です。
分割方法 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
現物分割 | 土地を相続人の数に合わせて分割する |
・公平に分割できる |
代償分割 |
ひとりの相続人が土地の所有者となり、 他の相続人には現金で分割する |
・土地をそのままの形で残せる ・公平に分割できる ・不動産評価額の算定が必要 |
換価分割 | 土地を売却し、売却金額を相続人で分配する | ・現金のため分割がしやすい ・売却前に所有権移転登記が必要 ・譲渡所得税が発生するケースもある |
共有分割 | 土地を相続人の全員で共有する | ・土地をそのままの形で残せる ・売却の際には相続人全員の承諾が必要 |
底地を売却することで得られる3つのメリット
底地を売却することで、次の3つのメリットが得られます。
・底地を現金化できる
・固定資産税や都市計画税を納めずに済む
・相続の際、財産分与がしやすくなる
底地を現金化できる
底地の売却によって得られるわかりやすいメリットは、現金化できる点です。地代などの不動産収益とのバランスを加味した上で、結果的にプラスになるようであれば、売却を検討しても良いかもしれません。
固定資産税や都市計画税を納めずに済む
底地の売却後は、土地に対する固定資産税や都市計画税を納める必要がなくなります。
相続の際、財産分与がしやすくなる
底地の売却は、相続の際、財産分与がしやすくなる点も見逃せません。将来的なトラブルの回避にもつながるでしょう。
底地の売却で考えられるデメリット
底地の売却で考えられるデメリットとして、不動産収入(地代や更新手数料など)を受け取れなくなる点があげられます。
底地の売却金額はいくらぐらい?相続税評価額を用いた底地の算出方法
底地の売却金額は、相続税評価額による算出方法にて、大まかな目安を知ることが可能です。相続税評価額の計算には、国税庁が毎年7月に発表する「路線価」を使用します。
画像引用元:国税庁「路線価図・評価倍率表」
https://www.rosenka.nta.go.jp/
画像の「280C」や「290D」が路線価です。280は1㎡の路線価であり、280千円=280,000円を意味します。たとえばそのエリア内に200㎡の土地を所有していた場合、280,000円×200㎡=5,600万円が基本の相続税評価額です。底地の相続税評価額の算出には、数字の後に記された「C」や「D」のアルファベットが関係してきます。
表記 | 借地権割合 |
---|---|
○○○A | 90% |
○○○B | 80% |
○○○C | 70% |
○○○D | 60% |
○○○E | 50% |
○○○F | 40% |
○○○G | 30% |
先程使用した「280C」であれば、C=70%が借地権割合となります。
そのため、5,600万円×(100%-70%)=1,680万円が「底地」の相続税評価額です。
相続税評価額は実勢価格の約80%と設定されているため、1,680万円÷80%=2,100万円が実勢格となります。実勢価格は、土地の売買価格の目安として使用される値段です。
この2,100万円を基準値として、過去の取引事例を参考にしつつ、売主の希望を含めたものが「最初の売買価格」として提示されます。
倍率方式
お住まいのエリアによっては、路線価が設定されていないところも存在します。その場合には、「倍率方式」によって算出された金額が相続税評価額です。
倍率方式では、「固定資産税評価額×倍率」によって算出されます。
仮に2,000万円の固定資産税評価額の土地で、倍率が「1.1」の場合、2,000万円×1.1=2,200万円が倍率方式による相続税評価額です。
固定資産税評価額は実勢価格の約70%ほどとされていることから、2,200万円÷70%=31,428,571円が実勢価格として、売買価格の目安となります。
倍率方式による底地の算出方法
画像引用元:国税庁「路線価図・評価倍率表」
評価倍率表(一般の土地等用)の説明
https://www.rosenka.nta.go.jp/
倍率方式が採用されている土地のエリアでは、上記の画像のような形で、倍率や借地権割合が掲載されます。
固定資産税評価額が2,000万円、倍率が「1.1」、借地権割合が60%の場合には、2,000万円×1.1×(100%-60%)=880万円が「底地」の相続税評価額です。
そしてこの底地の実勢価格は、880万円÷70%=12,571,428円となります。
底地の売却先となり得る2つの候補
底地は借地権が設定されている土地ということもあり、売却先となり得る候補として、次の2つが考えられます。
・借地人
・不動産会社
底地の売却先候補「借地人」
まずは、すでにその土地(底地)に戸建住宅などを建てて居住している「借地人」に、土地を買い取ってもらうやり方があります。
借地人が底地を買い取るメリットは以下のとおりです。
・自己所有の土地となるため、地代(や更新手数料)を支払わずに済む
・土地と建物がセットとなるため、金融機関からの融資が受けやすくなる
家の建て替えやリフォームなどのタイミングとうまく合致すれば、借地人に底地を購入してもらえる可能性があるかもしれません。
底地の売却先候補「不動産会社」
底地の売却先候補には、不動産会社も含まれます。底地を不動産会社に売却した際には、次のメリットが得られるでしょう。
・短期間での売却が可能
・早期の現金化
特に相続した底地の場合、相続税の納期までに現金化することを踏まえた際には、不動産会社への売却を検討してみるのも良いでしょう。
ちなみに底地を不動産会社に売却した場合の価格は、建物を含めない更地価格の10%から15%ほどが相場と言われています。
底地の売却が進めやすくなる2つのパターン
底地は金融機関による担保設定が難しい土地ですが、以下の2つのパターンに当てはまった際には、売却が進めやすくなるかもしれません。
・底地と借地権をセットにして販売する
・地代で高収益が期待できる底地
底地と借地権をセットにして販売する
底地を単体で販売するのではなく、借地権とセットにすることで、売却が進めやすくなる可能性が高まります。特に借地人が相続による借地権者であり、その土地(底地/借地)を将来的に利用する予定がない場合に有効です。
地代で高収益が期待できる底地⇒不動産登記物件としての需要
底地の中には、地代だけで高収益が期待できる土地も存在します。固定資産税や都市計画税を余裕で納められて、なおかつ利益が見込める底地です。不動産投資物件としての需要が期待できます。
底地の売買を視野に入れた相続の注意点
底地の所有者(地主)となるケースで最も多いと思われるのが、相続によるものです。ここからは、底地の売買を視野に入れた相続の注意点を紹介していきます。
底地の不動産登記簿謄本(不動産登記事項証明書)を確認する
底地の相続でまず最初に行うことは、底地の不動産登記簿謄本(不動産登記事項証明書)の確認です。不動産登記簿謄本(不動産登記事項証明書)は、底地が所在する管轄の法務局にて、取得することができます。
特に底地の名義人は必ずチェックしてください。もし共有名義となっていた場合には、底地の売買をするために、名義人の全員より承諾を得る必要があるためです。
借地契約の確認
底地の売却を実行する際、借地契約も確認しておきましょう。借地契約書が存在するようなら問題ありません。借地契約書がない場合には、借地人より契約内容(契約期間、地代、更新手数料、承諾料など)を確認し、書面にまとめておくことをおすすめします。
底地の売買で知っておきたい基礎知識のまとめ
ここまで、底地の売買で知っておきたい基礎知識について解説してきました。
・底地は借地権設定済みの土地である
・土地を貸している⇒地主(底地の所有者)
・土地を借りている⇒借地人(借地権を持つ方)
・底地の所有者は不動産収益や固定資産税の軽減措置が受けられる
・底地は借地権が設定されているため、金融機関からの融資が難しい
・底地の売却先候補は、借地人や不動産会社が主となる
・底地の相続時には不動産登記簿謄本(不動産登記事項証明書)を確認する
当記事が底地の売買を検討している方の参考になれば幸いです。