借地権の売却手順や高く売る方法は?
2021/08/16
借地とは言葉通り、土地を借りるものを指します。
借りた土地に住居を建てて住むか、それをさらに貸して収益を得ることも可能で、借地の利用法としてそうしている人は多いでしょう。
借りている土地を手放したい、この借地には借地権が発生している、これを売却する方法を知りたい、そもそも借地権の仕組みそのものを知らない、そういう人に、売却手順や少しでも高く売る方法を紹介します。
借地のメリットは借りる側にも貸す側にも
借地は地主との借地契約により、その土地を借りて地代を地主に支払います。
地主側には、自分で住まない土地を有効利用できる上に、地代で収入を得るというメリットがあります。
借地に住む側のメリットは、初期費用を抑えられるという点です。
家を建てることを考えても、土地も含めて買うことからスタートすると、その手間と土地代がかかります。
借地契約を結んで土地を借り、毎月借地料を払うことで、住宅の建築費用だけで済みます。
双方が好条件で土地を活用できるのが、借地契約です。
土地を買う費用は捻出しない方向で建築費用だけを計算している人にも、自分では使わない土地を貸すことで借主からの地代が入りメンテナンスも最低限で済むという両方にメリットがある土地利用です。
貸し借りの契約をしている間は考えないことですが、借りている側が、住んでいた土地や家を処分して少しでも収益にしたいと考えた場合、自分の土地ではないことで、制約が出てきます。
借地を離れるから売りたい、その方法は土地を借りている契約内容によって考え、手続きを進めていく必要があります。
借地売却はできるのか?
借地契約を結んで土地を借り、そこに家を建てたものの、年数が経って手放したいと考え始めた場合、売却する方法が気になるところです。
そもそも借地は、借主が売却できるものでしょうか。
・売却を考える理由の多くは建物老朽化
居住用の建物を借地に建築して、そこに住んでいた、もしくは借りた土地に建てた住宅を借家として、賃借人を入居させていた、そういうケースが大半です。
その建物が経年により老朽化してくると、一時退去して建て直すよりも、土地と建物をセットにして売るほうがいいのでは、と考える人が多くなります。
解体しての再建築や、大規模改築は相当な費用がかかるため、別の住居に移るほうが無駄なく済む場合には、その借地を手放したいと思うのが理由です。
そして、今までの借地料をトータルで計算すると、借地を売ってしまいたいと考える人も多くなります。
建物が老朽化するほどの長い年月の間、借地契約を結んでいる人ほど、借地を売りたいと考えるようになってきます。
・借地は自分の土地ではなく権利を持っている
ここでまず問題になるのが、借地が誰のものかということです。
借りている土地、つまり借地契約でその土地を利用しているだけなので、土地の名義人は地主です。
土地そのものを売却することができるのは、地主ということになります。
借主が持っているのは土地という不動産ではありません。
土地を借りている権利です。
これを理解して、どれに該当するか把握することが売却に必要となります。
・借地を利用することで発生する権利が借地権
不動産としての土地を持っている場合は物権の所有が認められますが、借りている土地に対する権利は、借地権という債権として扱われます。
この借地権にはいくつかの種類があります。
借地を売るという方法があるか、これがまず問題になります。
借地とはそもそも、自分の意思で自由に売れる不動産扱いではなく、賃貸権である債権であると前述しました。
これを売る方法としては、原則として権利の売却になります。
借りることで発生した借地権の売却という方法、つまり借地に対する権利を売るという方法です。
ただ、古くに借地契約を結んでいる場合、自分の土地として売れる借地権も存在します。
土地を借りることで発生する借地権に基づいた売却を解説します。
借地契約を更新せず、または中途解約して借地を地主に返却するのではなく、その上に建築した建物ごと売ってしまいたいという場合に注意すべき点があります。
建物は自分名義ですが、土地は地主の所有物となるため、土地を自分の不動産として売却することができません。
借地権の種類により、借りる期間や建物の処分など、取り決めがあります。
この違いにより、売却方法や条件に差が出てくるので、
土地を借りて家を建て、借地料を払うことで、借地権が発生します。
借地権には二通りあります。
地上権と賃借権です。
この違いにより売却方法にも差があります。
・地上権は自分の不動産として売却できる
借地権の中でも、権利の強弱があります。
地上権は地主に対して土地の権利所有意思を求めることができるものになります。
地代を払う代わりに、土地の所有者としての名義も、賃借人のものとして権利を行使できるのが、こちらの地上権です。
地上権を持っている賃借人は、その土地に対する所有権があるため、土地や建築物、土地に面する地下部分まで、売りたい場合も賃貸人に決定権があり、自由に売却できます。
地上権そのものを登記することを、願い出ることも可能です。
抵当権をつけることもできるため、借地権の中では強い権利を持ちます。
これは借地契約を結んでいる間に有効であり、地主の許可なく借地を売却、転貸するときには、借地契約が終了する前に、自分の所有している土地としての権利で手続きをしましょう。
借地契約が終わってしまった場合には、地上権も失効します。
借地を売るときに、地主の許可も必要がなく、自分の意思で売買手続きができるのが、この地上権です。
更新満了のケースが多い借地契約ではなく、一般的にはその土地を借りている人は、半永久的といえる長期にわたり、その土地に居住したり、経営している建造物を所有したりという場合が多く、近年ではあまり増えていませんが、古くから借地権を持っている人の中には、この地上権所有によって長く借地に住んでいる人がいます。
最終的にその土地と家を離れるときに、売りやすいのは地上権にあたる借地権です。
・賃借権は何をする場合にも地主の承諾が必要
一般的に多くみられる借地権は、こちらの賃貸権です。
権利としては地上権より弱く、土地の所有者は地主のままで、あくまでも土地を借りているだけで地代を支払い、そこに居住用や経営用の建物を建てて、使用を認めてもらうという形です。
この契約で土地を借りている場合には、地主の許可なく土地を売ることはできません。
借地契約の期間も、いくつかに分かれています。
地上権に比べ、要求や主張をできることが少なく、権利としてはかなり弱いものです。
ただ地上権契約は現在ほとんどなくなっているため、今後も土地を借りるとすれば賃借権になります。
また賃借権は損失を被るような印象がありますが、日本で制定されている借地借家法と旧借地法の保護を受けられます。
この二つの法は、賃借権を強く保護するような内容になっています。
借地借家法と旧借地法に基づいて、借地権の売買を進めることができます。
借りる期間が先に決められている定期借地権
賃借権その1 普通借地権
普通借地権は30年以上という機関が定められていて、双方合意があればさらに更新して長く借りることができます。
一般に知られている借地権はこれが多く、そこに建てる建築物が老朽化するだろうと予想できる期間、その土地を借りて住むには、これを利用するケースが多くみられます。
集合住宅や商店、工場を建てて利用する借地契約として使われることが多いのが、普通借地権です。
更新が可能な借地権ですが、地主の意向で更新されないときに、時価で買い取りを求めることができます。
借地権売却のうち、地主に売る方法として、これがよくあります。
地主に無償で返すのではなく、発生している借地権が債権であることから、更新せずに返却を求める地主に買い取ってもらうというやり方です。
トラブルが起きるケースもありますが、借地権が保証されているため、賃貸人の権利が通りやすくなります。
借地権を持ち、地代を払い続けてさらに更新を希望しているものの、落ち度がないのに地主都合で更新を却下されて退去する以外にない場合には、普通借地権を地主に売却するのがよい方法です。
賃借権その2 定期借地権
契約更新ができないため、契約期間終了と同時に地主に土地を返還する必要があります。
利用用途に応じてその中でも種類があります。
定期借地権は更新ができず、決められた期間が来たら土地を地主に返還するため、そこに建物を建てる場合、将来的なことを考えて契約を結ぶことが大事です。
建物を売ることができる定期借地権があるので、それを以下で解説します。
・一般定期借地権
50年以上が一般的な借地契約で、その土地に建てた建造物は取り壊して地主に返還することになります。
・事業用定期借地権
10年以上50年未満の契約期間となり、事業用に建てた建造物は取り壊して地主に返還する契約となります。
・建物譲渡特約付借地権
存続は30年以上の契約です。建物譲渡という言葉が入っている、定期借地契約の中でもその部分が他と変わった内容です。
借地人が住居用や収益用の建物を建てて利用していた土地を返還するときには、地主がその建物を買い取ったり、今まで自分の不動産として使っていた借地人が引き続き、今度は借家として借りて住み続けたりする方法もあります。
賃貸権その3 旧借地権
法改正があり現在の借地権には、借地借家法が適用されています。
旧借地法は、1992年より前に土地を借りる契約をしていた人か、その人が資産を相続した『相続人』がこの権利を持っています。
旧借地法による旧借地権が適用されている土地の借地契約をしている場合には、土地を借りるという契約の部分が賃貸人に対して有利な形で残されています。
更新を半永久的に続けることが可能で、その土地にその間住み続けることができます。
地上権の発生など、旧借地権を持っている人には売却にも特に有利な要素が多くあるので、いつ借地契約をしたか、1992年前後であれば、これをしっかり確認しておくと、借地権売却を進めるときに違いが出る可能性が高くなります。
借地権売却の方法は?売るルートや権利そして価格
借地権を売ると決めて、地上権は自分にあり好きに進められる場合、地主に承諾を得た場合、ここまではスムーズにたどり着いたとして、ではどういうルートで売却をすればいいか、少しでも損失がなく高く売る方法はあるか、これが気になる点です。
借地権を売る方法を紹介し、どの方法が一番今の状況に合っているかを考えていきましょう。
不動産会社を通して建物付き土地として売る
一般的な不動産売却、不動産売買の形式となります。
居住用、もしくは商用建物が付いた土地として、不動産に仲介を依頼して売却する方法です。
土地と建物のセットで売ることができる方法の中では、専門知識がある業者に委託できるので自分でしなければならない手続きも減らせます。
また価格を自分で設定できるため、制限が少ないやり方です。
ただ価格や売却予定期間の設定は、最初に相場からよく考えておく必要があります。
長く売れ残ってしまって価格を大きく値下げしなければならないケースも出るからです。
地主に買い取りしてもらう
地主がまたその土地を再利用したいと考えているときに、地主と相談して地主に買い取りをしてもらうという方法があります。
もともと地主が管理をしていた土地で、本来不動産登記は地主がしていることもあり、その土地を売買する流れとしては、地主がよく知っているため契約がスムーズに進みやすくなります。
起きやすいトラブルとして、古家付きの土地を返還することを地主が承諾しないというケースです。
地主は更地にして返還してほしいという考えがあり、住んでいた老朽化住宅、つまり古家は必要ないから解体してから返還してほしいという条件を出すことがよくあります。
土地は買い取るけれど、賃借人が建てた古家は要らないという理由で、解体後更地整備してから返還をということになります。
解体費用がかかるため、この条件に折り合いがつかなければ、地主に買い取りをしてもらうことで高くなる可能性も出てきます。
底地権も地主から買い取って所有権を得て売る
借地には底地権という所有権が設定されていて、これは地主が持っています。
これを地主との話し合いで、底地に関する権利も売ってもらい、借りている土地に関する所有権すべてを取得してから、価格や時期などを計算して売却する方法があります。
この方法を取ると、すべて自分の所有する土地として売却できるため、建物付きの土地として売る方法は多くなります。
また不動産としての価値も高くなるため、底地を地主が持っているまま借地権を売るよりも、高値で売れる可能性もかなり高くなります。
借地権の売却はできる 契約内容を確認して売ろう
借地に家を建てて住んでいる人は多くいます。
これをスムーズに売却するためには、どの契約で借りているか、更新はいつか、一度しっかり確認しましょう。
地主がそのまま土地を持ち続けたい、引き続いて利用したいという考えが強い場合には、まず地主に売却を持ちかけるのがよい方法です。
所有権の割合を確認して、借地権の売却を上手に進めてください。