お問い合わせ 電話番号

【法律お役立ち情報】第3回 家賃滞納による建物明渡し(トラブル編)

はじめに

先月号では、家賃滞納によって建物の明渡しを求める際の基本的な流れをご説明しました 。しかし、実際の現場では様々なトラブルがあり、思うように進まないことも少なくありません 今回は、明渡しで起こりがちなトラブル事例とその対処方法についてご説明します

トラブル1:賃借人が行方不明になっている

家賃を支払わないまま賃借人が行方不明になってしまうことがあります 。この状態では契約解除を通知できず、明渡しを求める手続きを進められません まずは住民票の取得や関係者への聞き取りなどで調査を尽くしますが、それでも居場所が分からなければ、訴訟を提起することになります 。相手が行方不明でも「公示送達」という方法を使えば、訴訟を進めることが可能です 。これは、裁判所の掲示板などに訴訟が提起された旨を公示する方法です また、調査の過程で賃借人が亡くなっていたことが判明するケースもあります 。その場合は相続人に対して契約解除を通知し、明渡しを求めますが、関係が疎遠な相続人からは協力を得られず、話し合いが難航することもあります 【注意点】 賃借人が行方不明だからといって、無断で建物内に立ち入って荷物を片付けたり、鍵を交換したりしてはいけません 。住居侵入罪や窃盗罪に問われたり、損害賠償を請求されたりするリスクがありますので、絶対におやめください

トラブル2:転居先が決まらない

契約を解除された賃借人も、退去が必要なことは理解しています 。しかし、特にご高齢の方や病気を抱えている方などは、新たな転居先を確保するのが容易ではありません また、引越費用や次の入居費用など、転居には資金が必要であり、資力がなければ明渡しを進めることは困難です 。状況によっては、生活保護の申請が必要になることもあります 本来は賃借人自身の責任で退去すべきですが、実際は積極的に動かないことも多いため、賃貸人側ができるだけ協力することが、結果的にスムーズな明渡しに繋がります 。例えば、親族に引き取りをお願いしたり、介護施設への入所手続きを手伝ったりといった協力が考えられます 最終的に強制執行となっても、転居先が決まっていない状況で強制的に退去させることはできません 。そのため、あらかじめ転居先の確保に協力することが必要になる場合があります

トラブル3:賃借人以外の人が住んでいる

賃借人に対する建物明渡訴訟で勝訴判決を得ても、いざ強制執行しようとしたときに、賃借人ではない第三者が建物を占有している場合があります 。この場合、その第三者に対しては強制執行ができません 悪質なケースでは、賃借人が明渡しを阻止する目的で、意図的に第三者に建物を使用させることもあります このような事態を防ぐためには、**「占有移転禁止の仮処分」**という裁判所の手続きをとるのが有効です 。この仮処分が認められると、建物を第三者に使用させることが禁止されます 。万が一、仮処分後に第三者が占有していても、その者に対して強制的に退去させることが可能になります 滞納家賃の請求や契約解除の通知をしても賃借人が一切応答しないなど、疑わしい兆候が見られる場合は、この仮処分も選択肢の一つとなるでしょう

最後に

今回ご紹介した事例以外にも、様々な事情で建物明渡しが難航するケースはあります 。少しでも気になる点があれば、お早めに専門家へご相談ください
■執筆者・プロフィール 戸門 大祐(とかど・だいすけ)戸門法律事務所 代表弁護士
2002年 明治大学法学部卒業
2004年 明治大学大学院 法学研究科修了
2006年 明治大学法科大学院修了
2007年 司法研修所修了(第60期)、弁護士登録(小宮法律事務所)
2014年 戸門法律事務所開設

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

RETURN TOP
お問い合わせ 電話番号