ご挨拶
皆様はじめまして。弁護士の戸門大祐と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 私は平成19年に弁護士となってから、これまで民事事件を中心に様々な案件に関わらせて頂き、 土地建物の明渡し、賃料改定、不動産の相続問題、未払賃料の回収、境界問題、近隣トラブルなどの 不動産関連の案件にも多く携わってきました。 このコーナーでは、特に地主・家主の皆様が関わることの多い 法的問題に関し、必要に応じて実際の事例等も挙げながら、トラブル発生時の対処方法や紛争予防策などを ご紹介させて頂きます。 少しでも地主・家主の皆様のお役に立てる情報をお伝えできればと思いますので、 お付き合いの程よろしくお願いいたします。賃料の支払猶予・減額を求められた場合の対応
昨年は、新型コロナウイルスという未曾有の事態により日本経済にも大きな影響が及びましたが、 今もなお収束の兆しが見えない状況が続いています。そこで今回は、新型コロナウイルスによる減収等を理由に 賃料の支払猶予・減額を求められた場合の対応についてご説明したいと思います。(1) 賃料の支払猶予について
賃貸人は、支払猶予に応じる法的な義務まではありません。しかし、無理に支払を求めても滞納や退去のリスクがあるため、賃貸人側の資金状況も踏まえながら猶予に応じるか否かを検討することになります。
事情によっては新型コロナ関連の支援策で窮状を回避できる可能性もあるため、賃借人に支援策を提案することも有用です。
賃借人との協議の結果、賃料の支払猶予に応じる場合は、後で揉めることのないように、賃借人との間で合意書を取り交わしておく必要があります。
支払猶予はあくまで支払を先延ばしにするもので、減額・免除するわけではないため、合意書には以下の点を明記するようにします。
- 一定の猶予期間
- 猶予した賃料の支払時期や支払方法(分割回数等)
(2) 賃料の減額について
賃借人が窮状にあるとしても、賃貸人に相当の資金的余裕がない限り、減額に応じるのは難しいのが実情かと思います。それでは、法的に賃料の減額要請に応じる義務はあるのでしょうか。借地・借家の賃料は、現行賃料を定めた当時と比べて大きく事情が変更した場合に改定(減額)を請求できる、というのが基本的な考え方です。
具体的には、以下の事情により現行賃料が不相当となった場合に、将来に向かって賃料を改定できるものとされています。
- 土地・建物の租税(固定資産税・都市計画税)その他の負担の増減
- 土地・建物の価格の上昇・低下
- その他の経済事情(物価、賃金等)の変動
- 近傍同種の土地・建物の賃料との比較等
賃借人の収入の減少は上記の要件に直接当てはまらないため、法的に減額に応じる義務まではないといえます。
また、コロナウイルスの影響は一時的なものと考えられるため、将来に向かって継続的に賃料を減額する根拠にもなりにくいでしょう。
そのため、賃料減額に応じられない場合でも、賃借人の資金繰りが厳しいようであれば、代替案として一定期間の支払猶予や一部免除を提案してみるのも一つの方法です。
もっとも、今後、新型コロナウイルス感染が長期化し、公租公課の減少、不動産価格の下落、物価・賃金の減少といった経済事情の変動が現れた場合は、上記の要件を充たし、賃料減額が法的に認められる可能性が出てきます。
今後も引き続き経済情勢を注視する必要があります。
■執筆者・プロフィール
戸門 大祐(とかど・だいすけ)戸門法律事務所 代表弁護士
2002年 明治大学法学部卒業
2004年 明治大学大学院 法学研究科修了
2006年 明治大学法科大学院修了
2007年 司法研修所修了(第60期)、弁護士登録(小宮法律事務所)
2014年 戸門法律事務所開設
2002年 明治大学法学部卒業
2004年 明治大学大学院 法学研究科修了
2006年 明治大学法科大学院修了
2007年 司法研修所修了(第60期)、弁護士登録(小宮法律事務所)
2014年 戸門法律事務所開設
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