はじめに
借地・借家契約の途中で当事者(賃貸人または賃借人)が亡くなった場合、契約は終了せず、相続人がその契約関係を承継します。賃貸人(貸主)が亡くなった場合
- 承継者の決定: 遺言があればその内容に従いますが、なければ相続人全員で物件を共有している状態となります。
その後、相続人全員による。遺産分割協議で、正式な物件の取得者を決めます。 - 賃貸人の地位の承継: 物件を取得した相続人は、賃貸人の地位をそのまま承継します。
従前の契約内容や預かっていた敷金も引き継ぐことになります。 - 遺産分割協議中の賃料: 遺産分割協議が完了するまでの間に支払われた賃料は、判例上、各相続人が自身の相続分に応じて取得するものとされています。
- 注意点: 相続人全員の共有状態が続くとトラブルが生じやすいため、できる限り早めに遺産分割協議を行うことが望ましいです。
賃借人(借主)が亡くなった場合
- 賃借権の承継: 賃借人が亡くなった場合も、相続人全員が賃借権を共有(準共有)している状態となるため、遺産分割協議で承継者を決める必要があります。
- 協議中の賃料支払い:
- 新たな賃借人が決まるまでの間は、相続人全員が共同の賃借人となります。
- 賃料の支払義務は「不可分債務」と解されており、賃貸人は相続人のうちの一人に対して賃料の全額を請求することができます。
- 契約解除の通知: 賃料滞納などで契約を解除する場合は、原則として相続人全員に対して解除を通知する必要があります。
- 名義変更料: 相続による賃借人の変更は、賃借権の「譲渡」とは異なるため、名義変更料(譲渡承諾料)の支払いは一般的に不要とされています。
- 身寄りのない賃借人が亡くなった場合:
- 賃貸人が一方的に契約を終了させて明渡しを実行することはできません。
- まずは戸籍調査で相続人の有無を確認します。
- 相続人がいないことが判明した場合、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てます。
- 選任された相続財産管理人と、契約終了や明渡しについて協議することが可能になります。
まとめ
相続はいつか必ず発生する問題です。■執筆者・プロフィール
戸門 大祐(とかど・だいすけ)戸門法律事務所 代表弁護士
2002年 明治大学法学部卒業
2004年 明治大学大学院 法学研究科修了
2006年 明治大学法科大学院修了
2007年 司法研修所修了(第60期)、弁護士登録(小宮法律事務所)
2014年 戸門法律事務所開設
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