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【法律お役立ち情報】第10回 賃料改定の基本ルール

はじめに

一度取り決めた借地・借家の賃料は、契約の途中でも、その後の事情の変化によって改定することができます。今回は、借地借家法に定められている賃料改定の基本的なルールについて、その概要を確認していきます。

賃料改定の要件・手続

(1) 賃料改定の要件

賃料の改定を請求できるのは、現行の賃料を定めた当時から事情が大きく変わり、現在の賃料が不相当となった場合です。具体的には、以下のような事情が考慮されます。
  • 固定資産税・都市計画税などの負担の増減
  • 土地・建物の価格の上昇・低下
  • 物価や賃金など、その他の経済事情の変動
  • 近隣の同種物件の賃料との比較

適正賃料の算定方法

現在の賃料が不相当である場合、具体的に相当な金額を算定する必要があります。その算定方法には、以下のようなものがあります。
  • スライド法: 経済変動の指数に合わせて算出する。
  • 利回り法: 物件価格に対する期待利回りをもとに算出する。
  • 差額配分法: 適正賃料と現行賃料との差額を、契約経緯などを勘案して双方に配分する。
  • 賃貸事例比較法: 類似物件の賃貸事例と比較する。

(2) 賃料改定の手続

賃料改定は、以下の流れで進めるのが通常です。
  1. 協議: まずは相手方に対して、賃料改定を求める通知を送り、具体的な金額について協議します。
  2. 調停: 話し合いで合意できない場合は、裁判所に調停を申し立てます。いきなり訴訟を提起することはできず、必ず調停から始めなければなりません(調停前置主義)。
  3. 訴訟: 調停でも合意できない場合に、訴訟を提起します。訴訟では、裁判所が選任した不動産鑑定士の鑑定結果などを参考に、最終的な賃料額が判決で示されます。

係争中の賃料支払いはどうなる?

(1) 賃貸人が「増額」を求めている場合

  • 賃借人の支払義務: 裁判で金額が確定するまでは、賃借人は自らが相当と考える額(通常は現行賃料)を支払えば足ります。
  • 確定後の精算: 裁判で増額が認められた場合、増額請求時に遡って差額を支払う必要があります。この際、不足分に対して年10%の利息を付けて支払わなければなりません。

(2) 賃借人が「減額」を求めている場合

  • 賃貸人の請求権: 裁判で金額が確定するまでは、賃貸人は自らが相当と考える額(通常は現行賃料)を請求できます。
  • 賃借人が一方的に減額した場合: 賃借人が一方的に減額した賃料しか支払わない場合、形式的には賃料の一部未払い(債務不履行)となります。ただし、未払額が相当高額にならない限り、これを理由に契約を解除することは難しいとされています。
  • 確定後の精算: 裁判で減額が認められた場合、賃貸人は減額請求時以降に受け取り過ぎた賃料を返還する必要があります。この際、超過分に対して年10%の利息を付けて返還しなければなりません。

まとめ

賃料改定の具体的な金額については、算定方法が一律でないため争いになりやすいのが実情です。増額・減額のいずれを求めるにしても、まずは専門家に相談し、適正賃料の目安や交渉方針などを確認することをお勧めします。
■執筆者・プロフィール 戸門 大祐(とかど・だいすけ)戸門法律事務所 代表弁護士
2002年 明治大学法学部卒業
2004年 明治大学大学院 法学研究科修了
2006年 明治大学法科大学院修了
2007年 司法研修所修了(第60期)、弁護士登録(小宮法律事務所)
2014年 戸門法律事務所開設

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